『掃除』A (Y.Iさん作)

それから真也はトイレに向かった。
教室を出て数秒後、校内には掃除開始を知らせるチャイムが鳴った。
「やばい、掃除始まった・・・。どうしよう・・・。3年生たち、掃除始めちゃうよなぁ。」

しばらくして、真也はやっとの思いでトイレの前に着いた。
しかし、予想通り、トイレからはホースで水を撒く音がした。
今日は週1回の、水を撒いて掃除する日だった。
「まだ始まったばっかだし、多分大丈夫だよね?」
真也はそう思い、トイレに足を踏み入れた。

「あれ〜?かわいい子が入ってきたぜ?」
入口を入ってすぐの床を磨いていた3年の一人が言った。
すると、続々と中にいた他のメンバー5人も出てきた。
その中には、前に囲まれそうになったときにリーダー格だった、校内でも有名なワルの山田がいた。

「あ、こいつ知ってるぜ俺。前、絡もうとしたら逃げられたんだっけ」
山田は僕を見つめながら言った。
そして続けてこう言った。
「なんだい?もしかしておしっこしたいのかな?」
僕は怖くて、今にも逃げ出したかったが、入口は3年によって封鎖されてしまっていた。
「なんだよ、早く答えろよ」
山田がそういったので、僕は声を震わせて言った。
「え?あ、あの、その・・・。そ、そうです。」

すると山田が言った。
「なんだ、そうなのか〜。いいよ、入って。」
真也が予想していた答えとは真逆だった。

不審に思いつつも、真也は奥へと進み、便器の前に立った。
すると、真也はあっという間に3年の6人に囲まれてしまった。
「早くしなよ。もれちゃうよ?」と3年生が口にする。

やばいな・・・。これじゃあ何かされる。

でも、おしっこは限界の位置まで来ている。ここで引き返せば最悪の事態も待っている。
それどころか、自分よりも数段大きい3年生に周囲を囲まれて抜け出すことも出来ない。

選択は出来ない。僕は決心しておしっこをすることにした。
僕がズボンのチャックを下げ、そこからまだ未熟なちんこを取り出した。
すると、前後左右から覗かれる。
真也はここまでは想像していた。なので早くおしっこをして教室に帰ろうと思っていた。

しかし、ここで予想外の事態が起こった。

周りを囲まれて緊張でもしたのか、さっきまであんなに押し寄せていた尿意が引いてしまったのだ。
どんなに力を入れても、おしっこは出ようとしない。

「なんだよ、ションベンしないのか?早くしろよ」
「俺らだって掃除したいんだ、早くしろ」
次々と3年から罵声が飛ぶ。

それから30秒くらいいろいろ試したが、結局おしっこは出なかった。
諦めて、僕はちんこをしまった。

「おい、お前もしかしてションベン出ないのに来て、俺らの邪魔しようとしたんじゃねえだろうな?」
3年に誤解を生んでしまった。
「ち、違います。本当におしっこがしたいんです。囲まれておしっこが出ないんです・・・。」
真也は誤解を解こうと必死に言った。しかし、誤解は解けるどころか更に増してしまった。
3年は、僕を便器の前から引っ張り出した。

「どけ!嘘だ、こいつ絶対俺らを邪魔しようとしてる!」
「山田に恨みでもあるんじゃねぇの?」
「山田、やっちまえよ」
思ってもいないことを次々と浴びせてくる。

すると、しばらく口を閉ざしていた山田が口を開いた。
「ねえ、本当におしっこしたいの?君。」
さっきとは打って変わって怒っているような口調だった。
「はい。おしっこしたいんです。でも何でか、止まったんです。」
「わかった。でもよ、お前どんだけ待っても小便しねぇじゃねぇか。本当にしたいのか?」
「はい。したいです。なので、少しでいいので僕の回りから下がってくれませんか?」

すると、山田たちは素直に僕の周りから下がってくれた。
その時、忘れていた尿意が瞬間にしてあらわになった。
「あっ!」
あまりに咄嗟に尿意が出てきたので、対処しきれず、数滴、ズボンの前を濡らしてしまった。
少したって冷静になり、便器の前に立ち直そうとした。

その時、便器と真也との間に水が飛んできた。ホースの水だった。
そう。山田がやったのだ。

進路を阻まれ、真也はまた一歩下がる。
「お前、小便してぇんだろ?早くしてみろよ。囲むぞ?また。」
あの状態だけは防ぎたい。しかし、ホースの水が邪魔して便器に進めない。

もう限界を越えようとしていた。
ここで漏らせば、間違いなく3年の餌食だ。
真也はふと左を見ると、出口へ向かって隙間が出来ているのを見つけた。
隙を突いて一目散にそこを通ってトイレから逃げ出し、下の階にあるトイレ目指して走りだした。

しかし、その途中で数学担任に出会ってしまった。
「おい、真也君、随分遅かったな。もしかしてサボりと違うか?詳しく話を聞きたい。職員室について来い。」
予想外の展開になってしまった。

内気な真也は、先生に事情を説明することも出来ず、ただただ説教を受けることになってしまった。

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